No. K-1-10 作曲家リヒャルト・ワーグナー 【ニュルンベルクのマイスタージンガー】 2015年撮影
Nr.K-1-10 Der Komponist Richard Wagner Die Meistersinger von Nürnberg , Photo Photo im Jahre 2015 |
■ ドイツ バイエルン州 ニュルンベルク、 2015年9月 撮影 |
上写真;「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第三幕の一コマの TV画面を背景に、ワーグナー像(自宅にて撮影)。 TV画面は 2013年ザルツブルク音楽祭のライブDVD(ステファン・ヘアハイム演出、ダニエル・ガッティ指揮 ウイーン・フィル、ザックス=ミヒャエル・フォレ、ヴァルター=ロベルト・サッカ、エファ=アンナ・ガブラー、ベックメッサー=マルクス・ウエルバ)。 |
リヒャルト・ワーグナーが1867年10月にスイスのルツェルン、トリープシェンで22年の構想の上に完成させた 【ニュルンベルクのマイスタージンガー】は、中世ドイツのニュルンベルク市における実在だった人物ハンス・ザックス(1494年11月5日生―1576年1月19日没)を中心にした喜劇である。 Meistersinger (マイスタージンガー)とは中世から近世にかけてドイツの手工業各種組合(ギルト)が組織していた、マイスター(資格)の一つで、詩歌の技の資格の称号である。15〜16世紀のニュルンベルクなど南ドイツ諸都市では手工業者の親方や職人、徒弟などが組合に集って詩歌の技を競い合った。16世紀、ニュルンベルクの人口は5万人だったそうだが、マイスタージンガー会員は約250人が居たという。彼らは日曜礼拝などの後に集ったりしていたらしい。歌学校と称される催しがそれで、歌唱コンクールが開かれていた。記録では1572年から聖マルタ教会で、そして1602年からは聖カタリ―ナ教会が使われていた。このようにドイツで歌合戦が盛んだったのは、元々ドイツ各地の宮廷を遍歴して抒情詩や恋愛歌を作り歌うミンネゼンガー(吟遊詩人)が中世貴族の没落で都市に住みついたからともいう。 そんな歴史を舞台に、オペラが展開する。ニュルンベルクでは歌合戦が予定されている。優勝者にはエファと結婚する権利が与えられる。そんな処へ放浪の元貴族のヴァルターがやってきて、エファと惹かれあう。エファにはライバルのベックメッサーが立ちはだかる。焦ったベックメッサーは、ヴァルターがマイスターであるハンス・ザックスの前で歌った歌詞をハンス・ザックス作だと思って盗んでしまう。歌合戦の場、ベックメッサーは支離滅裂な歌を歌って群衆から嘲笑されてしまう。ハンス・ザックスの作を歌っただけだと訴えるが、ハンス・ザックスは作者の歌手が歌うことを薦める。ヴァルターは朗朗と歌い、群衆を魅了してしまう。優勝者はヴァルターになり、マイスターの称号も与えられることとなるが、ヴァルターはそれを拒否してしまう。ハンス・ザックスはそれを咎め、ドイツの伝統が継承されてきて将来もされるであろうことを称える。 「ニュルンベルクのマイスタージンガー」は喜劇だとされている。しかし妻を亡くしたハンス・ザックスをもエファに密かに思いを寄せていたことを思えば、彼の想いの成就は破れるのだから悲劇である。その悲劇こそ老化していく男の喜劇ではあるが、、、。 今回、ハンス・ザックスにちなんだ場所と、第一幕の舞台となった聖カタリ―ナ教会跡を探訪してきた。ハンス・ザックスは靴職人にして歌歌手の名人で数々の作品を残している。 第二次大戦でニュルンベルクの町の殆どが壊滅的に破壊され、ハンス・ザックスの家の周囲は 近隣の広場に銅像が残るのみである。そして聖カタリ―ナ教会は、跡地に壁面が残るだけである。しかし町自体はアメリカナイズされた鉄筋コンクリートのビルディングでなく、中世を偲ぶような街となって生まれ変わっている。ドイツらしさを失わない復元に、ドイツの懐深さを感じるものである。 |
上写真2枚;ニュルンベルク歌劇場正面と、ワーグナー像。 |
Heil Sachs ! Nürnbergs teurem Sachs ! (♪ ザックス万歳! ニュルンベルクの誇り ザックス!♪) |
残存している教会門には、黒いプレートが付いていた。金字は判りやすいが、黒字は読みにくい。色を変えた意味があるのだろうか。 「ST KATHARINA EHEMALS DOMINIKANE RINNENKIRCHE UND KLOSTER GESTIFTET 1295 IM 17+8 JAHRH VERSAMMLVNGSORT DER MEISTERSINGER 1945 ZERSTöRT」 (以前ドミニクリンネン教会・修道院が1295年聖カタリ―ナとなった。 17−18世紀にマイスタージンガーの会場となった。1945年に破壊された。」 上記の記述をみて驚いた。聖カタリ―ナ教会が「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第一幕の舞台になっているが、ハンス・ザックスの生きた時代は16世紀である。とすると、聖カタリ―ナ教会を舞台としたのは、ワーグナーの全くの創作だったことが分かった。ともあれ、ハンス・ザックスの時代より近世にマイスタージンガーの会場となっていたのは事実なので史実の場として、そしてワーグナー創作の場としての訪問であった。 |
下写真3枚; ニュルンベルクの街並み。ハンス・ザックスが住んだ町、そしてリヒャルト・ワーグナーも歩いた町を彷彿することもできようか、、、。 | |
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Last Updated 2016-05-09