伊勢大神楽は舞と呼ばれる獅子舞と、曲と呼ばれる放下(曲芸)によって構成される神楽であり、三重県桑名市太夫を本拠地としている。江戸時代、問答無用のお伊勢参りが流行するが、それでも伊勢まで行くのは庶民にとっては容易ではなかった。そこで伊勢神宮の御師や先達らが地方に出張して伊勢神宮の御神札を授与して周った。伊勢大神楽も同様な役割を担う人たちであったが、行く先々の神社や、あるいは民家をまわって総舞といって前記した舞や放下を披露し祓いをした。現在は宗教法人伊勢大神楽講社として東阿倉川系一組と太夫系五組の計六組が、西日本を中心とする広範な地域(三重・岐阜・滋賀・福井・京都・大阪・和歌山・兵庫・岡山・鳥取・広島・山口・香川の2府12県)を巡回してる。 江戸時代から伊勢大神楽の本拠地は現在の三重県桑名市の増田神社で、その周辺は神楽師が多く住んでいた。そのことは現在も増田神社の所在地名が太夫と云うなど、名残がある。そこの増田神社で毎年12月24日午後、各社中が集結し祭礼を執り行った後、神前で大神楽を奉納する。これを<舞い初め>という。そして社中ごとに桑名を出発して元日から12月にかけて一年間、近江をはじめ北陸、近畿、山陰、瀬戸内、四国など、各地の持ち場へ巡業に行く。 私は平成19年の秋に三重県多気郡の頭之宮四方神社秋季例祭と桑名市の増田神社において計2回、伊勢大神楽を拝見・撮影することができた。増田神社の見物衆は約80%が外来者であるが地元民は心得ていて、声援や冷やかしたりして神楽師と楽しんでいた。このような地元民との触れ合いが神楽師の芸が上手く進行する潤滑油になっているともいえよう。頭之宮四方神社においても神楽師さんは、昨年も見かけた顔が居るナー、と見物衆の笑いをとっていた。こちらは神社の秋の例祭での大神楽であり、毎年その神楽団が訪れて来るのを多くの地元民が楽しみにしている雰囲気が伝わってきた。地方を巡回している伊勢大神楽がオラが村にやって来るのを一年間待つ、、そして神符を授与していただく、、、このようなことも地方においては一年の暦として定着していたのであろう。その意味では、伊勢大神楽の写真とは地方を巡回している情景の中にこそ、より本来の姿があるのかもしれない。 |
■ 頭之宮四方神社 |
撮影場所&日;三重県度会郡大紀町、平成19(2007)年11月18日 現地情報;伊勢大神楽は境内で12時半〜15時頃、駐車場有。食堂無し 撮影機材;Nikon D70s+SIGMA10-20mm、D80+VR18-200mm |
□秋季例大祭 奉納舞楽 |
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□伊勢大神楽(頭之宮四方神社の境内にて) |
上写真;扇の舞 |
上写真;水の曲 |
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上左右写真;剣三番叟 |
上左右写真;魁曲、お伊勢参りの花魁道中を再現する舞 |
■ 増田神社 伊勢大神楽 |
撮影場所&日;三重県桑名市太夫、平成19(2007)年12月24日 現地情報;舞は12時半〜15時半。駐車場無し。食堂など無し。 撮影機材;Nikon D300+VR18-200mm |
上写真;扇の舞 |
上写真;水の曲 |
上左写真;献灯の曲、上右写真;神来舞 |
上写真;魁曲 |
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Last Updated 2009-12-29