日本!(お神楽・田楽)
No.29 石見神楽 (石見神代神楽上府社中)
撮影場所&日;島根県浜田市上府・上府八幡宮、平成20(2008)年10月11日午後10時〜12日午前6時
撮影機材;Nikon D300+Tamron28-75mmF2.8、D80+SIGMA10−20mm

11日土曜日の午前中の仕事後に、石見神楽を拝観・撮影のため島根県浜田市上府まで行き、翌12日日曜日の夕刻に帰宅した。ここの鎮守社である上府八幡宮の秋祭りで、上府社中さんが12演目のお神楽を午後10時から翌朝6時まで延べ8時間、完全徹夜で次々と奉納された。石見神楽は1年半前に安芸高田市の囃し田を撮影に行った折に、温泉会館で大蛇を一曲拝見したのみで、本格的な神社奉納神楽は今回が始めてである。行く前には三遠南信の神事系、呪術系湯立神楽に親しんだ私に、煌びやかな装束のお神楽に馴染めるか不安であったが、行って良かったっ!病み付きになりそうな面白さである。三遠南の大部分の湯立神楽と異なり、ストーリーがしっかりしており、そこに舞が絡まっていくのだが、舞もお囃子も激しい激しい。例えば南信濃の『霜月まつり』の伊勢流湯立系神楽は、舞が湯立に従属し、湯立は祖霊や滅んだ武家へ怨念鎮めが目的であったりする。どうしても おどろおどろしい雰囲気があるのだが、石見神楽は対極にあるようなエンターテイメント性が認められた。そのお神楽の胸のすくような爽快さと勇壮さと劇性に圧倒されながら、眠くなる間も無く朝を迎えた。演目は神事系の祓い舞に始まり、呪術的な四剣、それ以降の10曲は物語性の神楽であった。物語は古事記・日本書紀に素材を求めたものだけでなく、能楽の影響を受けた曲も散見された(例えば、黒塚や大江山)。

演目は、下記の通りであった。
【塩祓】【四剣】【鹿島】【岩戸】【頼政】【塵輪】【天神】【恵比寿】【大江山】【黒塚】【鐘馗】【大蛇】

驚くのは、石見神楽というジャンルのお神楽が、人々に深く深く根付いていることである。境内で斎燈(焚き木)の番をされている方と話したら、一家全員が神楽をやるとか、寄ったガソリンスタンドの人が私も舞いますとか、驚くほど神楽が生活の一部のようなのである。それに徹夜の神楽なのに、1〜2歳の幼児が帰ろうとしないで明け方まで見ている姿にも感嘆した。きっと心底、石見神楽が好きで、将来は舞うようになるのだろう。地元の人達が寒い野外に毛布と椅子持参でお神楽を楽しむ様子は演劇を楽しむようでもあり、そのお神楽への接し方の違いもカルチャーショックであった。11日の夜には、浜田市内だけで六箇所でお神楽が行われていた。近隣の石見地方まで広げれば、無数のお神楽囃子が月夜に鳴り響いていたことだろう。それ程のお神楽文化圏なのである。
石見神楽、、、素晴らしい世界である。当地から浜田市まで、東名阪道・新名神・京滋バイパス・名神・中国・浜田道を往復して1141Km、、、徹夜明けの復路の運転は眠気で意識朦朧とするが、また行こうと思う。

■塩祓
舞座を祓う神楽である。

■四剣
塩祓同様に舞座を祓う舞である。舞容は五方を祓うように舞う。

■鹿島
鹿島神社の御祭神、建御雷之男命が大国主命とその子の事代主神、建御名方命に、葦原中国の国譲りを求める舞。

■岩戸
天宇受売命、天児屋命、手力男命らが岩戸にお隠れになった天照大御命に再生を願う舞。

■頼政
平安京の都に出没して堀河天皇を苦悩させる、鵺退治の曲。能楽【鵺】が原曲であろう。

■塵輪
異国から神国を攻めてきた悪鬼を討伐する、仲哀天皇の舞。敵と天皇方の四人の舞人が、激しく交差回転しながら舞う。その雰囲気を表現してみた。

■天神
右大臣菅原道真は、左大臣藤原時平の策謀に嵌り大宰府に流される。その無念を晴らすべく、道真は時平を討つ。

■恵比寿
捨てられたヒルコ命は摂津の国に漂着し、夷三郎大明神、戎大神として祀られる。民俗的には海からの来訪神で、海の彼方から富をもたらす神様という。豊漁や航海の安全の神様、または商売繁盛の神様となる。

■大江山
丹波の国大江山に住む酒呑童子という鬼の頭の一派を、源頼光らが山伏姿で潜入して鬼退治をする。能楽【大江山】と同じストーリー展開になっていた。

■黒塚
法師と剛力が人里は離れた山間で一夜の宿を求める。そこには浮世離れした美女が、、、悪鬼の化身である。一人は鬼に殺され、もう一人は逃げ帰る。その鬼を退治に、二人の武士が向かう。能楽【黒塚(安達原)】と【殺生石】が合体したようなストーリー展開であった。

■鐘馗
厄除けの茅之輪を持った須佐之男命が、中国の鐘馗大神と習合した姿となって現れ、玄宗帝を苦しめる疫神を退散させる神楽。能楽にも同名曲が有るが、舞われることが稀な曲である。

■大蛇
須佐之男命が出雲で、嘆く足名椎、手名椎の老夫婦と櫛名田比売に出会う。もう直ぐ姫が八俣遠呂地(大蛇)に生贄になるという。須佐之男命は酒で酔わせた大蛇を退治する。



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