撮影場所&日;愛知県一宮市真清田神社斎田、平成19(2007)年5月13日 撮影機材;Nikon D70s+SIGMA10-20mm、 D80+VR18-200mm |
動物の聴覚のような神経組織が無い植物にでも音楽を流すと、生育が良くなるという話を聞く事がある。例えば果物にモーツァルトを流したら甘みが増した、日本酒醸造においては酒の味が変わった等々、、、。音楽の数十Hz〜数千Hzの音波の振動が、何らかの物理的化学的作用を及ぼして、活性化を促したというのである。特にベートーヴェンやモーツァルトの音楽は、そよ風の変動や安静時の心拍にもみられる自然なやわらぎを持ち、これが植物の生育に好影響を与えても不思議ではないと云う。実は植物、特に稲の生育のために田で囃し立てて音楽を聞かせることは、日本人は昔から行なってきた。御田植祭、囃し田に田楽や田遊び等など、、、。稲の豊穣を願って行なう神事や芸能は、おそらく農耕の始まりと共に行なわれたであろう。 しかし、、、近年の野菜や果物に音楽を聞かせたら味が良くなったという理由を科学的に説明しながらも、その説明には無理があるし、日本古来からの御田植祭などに比べて、欠けているモノがある。一言でいうなら、スピリットである。スピリットとは、神々・精霊など自然の神格への畏怖と感謝である。日本の神道祭祀において、稲の生育と収穫への年間の祭りは、重要なウエイトを占めている。二月の祈年祭で年穀の豊穣を祈る祭りを斎行するが、かつては神祗官または国司が全国の神社に幣帛を奉ったほどの重儀であった。 五月、機が熟した春風の下、真清田神社さんでは「イセヒカリ」という伊勢神宮から下賜った早稲種が御田植祭で植えられる。 真清田神社さんの御田植祭は、初めて奉拝させて頂きましたが、一つ一つの神事の様式美は格別であった。宮司様の祝詞奏上に始まり、神職さんが神水を斎田に注ぎ、三把苗を斎田に奉じ、早乙女さんが田舞と田植え、そして御幣を斎串として斎田に挿して御田植祭が終わる。 里においては、例えば奥三河の霜月湯立神楽「花祭」でも、龍神が潜む滝や河で滝祓を行なって汲んだ聖水は、湯立の竈に注がれて神事が行なわれる。聖なる神水を斎田に注ぐことは、御田植祭の神事として重要なステップである。なぜなら、水の霊の存在無くして稲霊の誕生は無いからである。そして水と共に重要な光(火・日)は、斎串が火の霊の受信アンテナとなるのではなかろうか。かくして水と光の融合した下、稲霊(田の神)は降りて誕生する。稲の霊の誕生を促するのは、早乙女による田舞である。早乙女は斎田に結界を結ぶが如く、舞いながら斎田を一周してから田に入る。稲が成るのは、孕むという行為の類感呪術であるから、早乙女は妙齢の女性である。早乙女の姿は、田の神を此方へなびき依りたまうように、美しく華やかである。 稲は美しい早乙女の舞と囃子に、生育の機能を増進する。美しい舞やお囃子に託して、田の神(稲霊)の神威発揚を願い、より良い稲の生育を願うのである。 (真清田神社様、いつもありがとうございます)
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Last Updated 2010-01-01