撮影場所&日; 三重県志摩市阿児町甲賀、 平成24(2012)年8月13日 夕刻、浜辺に設置された祭壇(三界萬霊諸精霊等)の前で御夫人衆による御詠歌奏上で始まる。 祭壇には一年間に新盆となった30名の法名が記されている。 御詠歌が30分も続き終わると、地囃子の慰霊行列が傘鉾や笛太鼓で入場してくる。 祭文の奏上後、三人の鞨鼓踊りが側踊りの20余名の円陣の中で奉納され、鎮魂の祭典となる。 それも済むと、ご焼香が始まる。 集落の住人は、新盆の家だけでなく黒の礼服に浜辺に佇む。その中で行われる行事は、故人のご冥福を祈る供養・鎮魂の気持ちに満ちていた。 ところで、、、死霊は鎮魂によって祖霊となり、山へ昇るのではないのか、、、 海での儀礼に接すると、山上他界説も一つにすぎないことを実感する。 死霊は祖霊と成り成仏して海の彼方へ向かうのだ。そして還ってくる。 海の恵をもたらしてくれるのも、祖先のご加護と意図があってのこと、、、その点は「山ノ神=祖霊」と合致するのだが。 【平家物語】の壇ノ浦で平家滅亡のシーンに、二位殿の言葉に興味深い文がある、、、 「あの波の下にこそ、極楽浄土とて、目出度き都の候。」、、、平安時代の貴族化した武士の思想と、 江戸時代におそらく始まったであろう海辺の民の思想が一緒であろうはずはないが、 それでも海の異界の一つのヒントとなろう。 甲賀の鼓踊、浜辺には仏壇が海を背に配されて、その前で儀礼や念仏踊りが行われる。 新盆の生々しい死霊は、子孫らの供養によって少しずつ浄化されて祖霊へとなりながら海の彼方へ向かうのであろう。 であるから、祭場の空間―祭壇―海、は一直線の 死霊―祖霊 の霊の往還路である。 カメラマンがこの霊の往還路に立ち入って撮影するのは、不遜で罰当たりと思う。 撮影は、この霊の往還路を妨げない堤防側から行うべきである。 |
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Last Updated 2012-11-15