日本!(雅楽・舞楽)
No.29 生田神社『雅楽の夕べ』、 伊勢神宮『秋季神楽祭』
■ 生田神社 生田神社秋祭り 生田雅楽会定期演奏会『雅楽の夕べ』
撮影場所&日;兵庫県神戸市中央区、平成20(2008)年9月21日
撮影機材;Nikon D300+VR70-200mmF2.8G、D80+SIGMA18-50mmF2.8

今年の「生田雅楽会定期演奏会 雅楽の夕べ」の舞を一言で表現するなら、「颯爽」だろう。
曲目は下記の通りであった。
神楽【浪速神楽(剣)】は、巫女さんの祓いの舞。神楽【生田舞】は、生田神社特有の巫女舞。神楽【朝日舞】は神職さんの人長舞。そして左方舞楽【蘭陵王】は走舞。
管弦は【黄鐘調音取】【越天楽】【青海波】が奉奏された。

特色ある曲としては、神楽【生田舞】が挙げられる。この神楽は順徳天皇、後鳥羽上皇が約800年前に詠まれた和歌を元にしてつくられ、曲は宝塚音楽学院の竹内平吉氏、舞は藤間勘二氏が作られた。装束は平安時代の宮廷衣装をもとにして、ピアノ演奏で舞われる(雅楽会資料参考)。生田神社固有の巫女舞である。

神楽【浪速神楽(剣)】

神楽【生田舞】

舞楽【蘭陵王】


■ 伊勢神宮 『秋季神楽祭』
撮影場所&日;三重県伊勢市伊勢神宮内宮、平成20(2008)年9月23日
撮影機材;Nikon D300+VR70-300mm、D80+VR18-200mm

今月22〜24日の伊勢神宮内宮神苑における秋季神楽祭では、舞楽【迦陵頻】と【延喜楽】が奏楽された。そして私が参宮した23日には参集殿能舞台において、喜多流の能【羽衣】も演じられた。内宮において奇しくも同時に奏された【迦陵頻】と【羽衣】、舞楽と能楽とジャンルこそ異なっても、全く無縁でもない箇所が有る、少々こじつけだが、、、(汗)。
能【羽衣】では・・・三保の松原で天女の証である羽衣を脱いでいたら、羽衣を白龍という人間に盗まれてしまう。羽衣が無いと天空へ戻れない、と嘆く天女が描写する天上の世界は、
(地)「迦陵頻伽の馴れ馴れし。声今更に僅かなる」
と地が謡うように、迦陵頻という極楽の鳥が鳴いている世界なのだ。そう、その迦陵頻が顕現しての舞こそ、舞楽【迦陵頻】なのだ。極楽の鳥、、、神宮の舞女さんや、真清田神社(愛知県)や熱田神宮(愛知県)の巫女さんの【迦陵頻】を拝見すれば、やっぱりこの鳥の居る世界は極楽なのだろうと、納得してしまうが(汗)。
能【羽衣】では、雅楽や舞楽の世界を意味する謡が数箇所ある。白龍と問答の末、返された羽衣を着して天女の舞を舞い始める箇所の地謡・・・
(地)「東遊の駿河舞 この時や始めなるらん」
これは東遊の駿河舞は、雅楽でいう処の国風歌舞という祭祀舞のジャンルを意味している。元は東国地方の士風歌舞で、神事舞の代表的存在である。しかしながら能【羽衣】では当然ながら能のお囃子で序之舞を舞うから、国風歌舞そのものをシテ(天女)が舞うわけではない。
(地)「聞くも妙なり東歌数添えて数々の。笙笛琴箜篌(しょうちゃくきんくご)」
雅楽楽器が列挙されるように舞の地謡で謡われる。箜篌(くご)は百済から伝来した楽器で、正倉院には残っているが、実際には平安時代に用いられなくなった楽器である。であるから、室町時代中〜末期の能【羽衣】の作者(不明。かつては世阿弥と云われた)が、この楽器の音色を聴いたことは無いのだが、イメージの世界としてあったのだろう。
このように雅楽、舞楽の世界は謡やイメージとして能の世界にも散見される。なれど実際に雅楽・舞楽の影響がどこまであるかと云われたら、学術的な事は別としても鑑賞や稽古している限りには、まったく影響が感じられない。
余談になるが、この日の能【羽衣】を舞われたシテは、素人さんである。立方、囃子方を全てプロに盛り立てて頂いての稽古の集大成としての演能は、素人稽古者には最高の夢の実現と贅沢であろう。喜多流による【羽衣】、天女の天冠に牡丹の花が付き、小書は「舞込」といって天空に昇るときに橋掛で舞を舞うのが特色であった。

舞楽【迦陵頻】


舞楽【延喜楽】


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Last Updated  2010-04-15