日本!
No.38 伏見稲荷大社 火焚祭
撮影場所&日;京都市伏見区、平成19(2007)&21(2009)年11月8日
撮影機材;Nikon D80&D300、VR18−200&VR70−300mm
現地情報;火焚神事は、午後2時から

京都の一部神社・寺では秋に、「火焚祭」が行われる。神社においては火焚串を焚き上げ、大祝詞を奉唱して罪障消滅・万福招来を祈る。伏見稲荷大社さんでは三基の火床が設けられ、全国から集まった10数万の護摩木を祝詞奏上、神楽女(かぐらめ;巫女)の奉奏しながら火の中に火焚串が投じられる。この様子を奉拝・撮影していると、大祝詞が読経のように聞こえるし、火焚串は護摩木のように思えてくる。伏見稲荷大社は東寺が真言密教根本道場になる過程で、秦氏が稲荷山から寺の建造に木材を提供したことで、東寺の守護神となっていく。真言密教における茶吉尼天(ダキ二テン)というインド伝来の鬼神が乗る野干という動物が狐に置き換わり、この鬼神が狐使いとされることから狐が使役神となっていく。つまりこの密教の茶吉尼天の使役神の狐が、稲荷神の田の神と同一視されるようになっていくのである。このように密教と稲荷大社は緊密な関係にあるのだ。では密教において護摩木を焚くことはいかなることかというと、基本修行に「四度加行」というものがあり、密教最高の秘法を受ける儀式である伝法灌頂に入壇する前提として、「十八道」「金剛界」「胎蔵界」そして「護摩」の四種の修法がある。その「護摩」は、供物と護摩木を火に焚き上げて火の神が供物と祈願を天に運び、恩寵にあずかろうという修法である。これは「外護摩」と云うが、それを彷彿とさせるのが今回の火焚祭である。祈願を奏上するだけでなく、秋になって田の神が山へ戻るように神返しの儀式とも考えられる。

    《参考文献》 【大伊奈利】No.172秋号、No.173冬号、伏見稲荷大社講務本庁

■私の写真が3枚使用されている、「稲荷大神」の書籍の御案内

【稲荷大神  イチから知りたい日本の神さま2】
中村陽監修; 戎光祥出版 平成21(2009)年11月初版
¥2,200+税  ISBN978-4-86403-003-8

キツネで御馴染みのお稲荷さん、身近な神様でありながら、漠然としている。しかし本書では、そのお稲荷さん信仰の変遷と奇譚を、伏見稲荷大社さんを中心に明快な文で解説を展開している。豊富な写真と図で、眺めても読んでも分かりやすい書籍に仕上がっている。シリーズの第二段で、第一弾は既刊の「熊野大神」。


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Last Updated  2010-06-10