撮影場所&日;滋賀県長浜市鳥羽上、鳥羽上北会議所&八幡神社、平成20(2008)年1月13日
撮影機材;Nikon D300+VR18-200mm、D80+SIGMA10-20mm
長浜は大好きな街であるから、年に2〜3回は訪れている。長浜など湖北地方には「オコナイ」という正月行事が有る事は以前から知っていたが、なかなか撮影の機会がなかった。今回、初めて「オコナイ」の餅花(マユダマ)作りから社参までを撮影許可を得て写す機会があった。
「オコナイ」は町内の行事として行うため、お役所や観光協会でも日程を全く把握していないので、探してみるしかない。唯一参考になるのは、【長浜市史;第六巻祭りと行事】に平成13年度の日程が載っているくらいである。私が今回訪れたのは鳥羽上北の「オコナイ」であるが、早朝のまだ午前四時半頃に道に迷って(ナビにも出なかった)何回も「トウヤ(頭屋、当屋…開催場所)」へ電話して尋ねたら、迎いに来て下さるなど親切にして戴いた。午前5時少し前に着くと、もう餅搗きが行われていて、やがてクロモジの枝に餅を巻きつけて餅花(マユダマ)を作る処であった。このようなことは女人禁制で男だけで行い、餅花作りも年長者に限られるという。「オコナイ」は仏教の修正会・修二会が民間(民俗)宗教行事に入ってきたと考えられているが、祖霊信仰と豊穣予祝が目的である。魂の象徴である鏡餅を作ったり、造花で荘厳したりもするが、そちらは祖霊祭の修正会的内容である。一方、餅花は豊穣の象徴であって、修二会的予祝である。餅花はこの集落では「マユダマ」と呼ぶが、昔この地域は養蚕が盛んであったことから、現地では繭玉と云う意味ということである。ただ祈年祭の意味合いもあるようで、一説によると稲穂の熟した形だともいう。養蚕や農耕の予祝と考えてよいだろう。現在、この鳥羽上北町でもそうであるように長浜市における「オコナイ」は宮オコナイと云われるように神社へ社参する。ゆえに「祈年祭」という神道祭祀の一つと考えられるのであろう。ただこれは明治になっての神仏分離で神道化が湖北の「オコナイ」で進んだためと考えられており、元は仏教の悔過(けか;仏に罪過を懺悔して、罪障の消滅や天下泰平などを願う、密教的行法)が本質である。
湖北150箇所の「オコナイ」があれば150の違った「オコナイ」が有るとも云える程にバラエティがあって、「オコナイ」について書くのは私的には難しい。できるだけ機会を見つけて撮影してみるしかないと思っている。
なお、今回は午前5時から午前9時にかけて撮影したので写すことが出来なかったが、午前1時には長彦神社と八幡神社で『神うつし』があったようである。そして午後5時には本当番は後当番を従えて新の本当番宅へ長彦神社の御幣を持って、『神送り』をするそうである。
《参考文献》
【長浜市史】第六巻、編纂委員会
【湖北のまつり】市立長浜城歴史博物館
【近江の宮座とオコナイ】中澤成晃、岩田書院
【続 西黒田風土記】西黒田公民館郷土史研究会
|