撮影場所&日;滋賀県甲賀市甲南町市原、平成21(2009)年1月11日 撮影機材;Nikon D300+VR18-200mm、D80+SIGMA10-20mm これまで湖北のオコナイを撮影したことはあったが、甲賀地方のオコナイは初めてである。湖北地方と並んでオコナイの盛んな土地であるが、その中でも浄正寺の「薬師オコナイ」は御鏡餅の配置に特色があって、以前から参詣したいオコナイであった。特色とは、御鏡餅が三宝や祭壇に置かれることなく、地面に御鏡餅の表面が垂直になる状態で吊るされることである。すなわち、鏡を掛けた状態に似ているのである。添付写真では、左右に一個づつ丸いお餅がブラ下がっているのが判って頂けると思う。この御餅のブラ下がりを“とうのもち”という掛餅である。。お鏡を十文字に縛って樒と餅花で飾る。この掛餅は甲賀地方では広く見られる飾り方らしいが、鏡の形をしておりお正月のお餅を“お鏡餅”と呼ぶ呼称の元とも云われ、興味深い荘厳形式である。お餅の荘厳は、“ほのもち”といって、4m程の竹の半分を三叉に分岐させ楕円形に曲げ、餅をくっ付ける。“はなびらもち”は重ね餅である。 他の荘厳は、セコと呼ぶ藁束にそば殻を混ぜたドンガラに大根や芋の切片に顔を書いて突き刺したもの、酒の肴に茹でた大豆や一味に漬けたゴボウなども並ぶ。 本堂である薬師堂のオコナイに参列可能なのは男性に限られ、座席は一年間お堂をお守りされた頼守(たなもり)を最上座に、以下 法印、区長、長老、、、などの順に着する。頼守は精進潔 斎を行い、肉食は禁じられている。甲賀地方のオコナイの特色として、儀礼の最中に法印が「ダイジョウ!」と声を立てると参詣者が籐の木で床を叩く“乱声”があったり、魔除けの牛玉宝印があったりと、天台宗での仏教悔過の世界を垣間見ることができた。それだけでなく、男女の性器を表す呪具(じゅぐ)を用いたり、“とうのもち”を供えるのに結婚や出産が関係しているなど、村内繁栄の象徴としての和合を予祝する色合いが強いオコナイであることも特徴と思えた。 ※オコナイ本日には、区長様はじめ皆様にお世話になり、感謝申し上げます。 |
上写真;掛餅は右側が酒頭餅で、新しく嫁をもらった家が供える。左側は左頭餅で、男子が生まれた家が供える。 |
上左写真;酒頭餅。上右写真;セコと呼ばれる藁束に蕎麦ガラを混ぜたもの(ドンガラ)に、芋や大根の切片に顔やサイコロを書いて刺す。そして日月の餅。 |
上左写真;ニ献目の肴。一味まぶしの牛蒡、上右写真;初献の肴で、茹でた大豆盛り |
上左写真;法印の読経。上右写真;乱声の後、籐の皮を剥いて輪を作る。この輪の形、女性器を表す。 |
上写真;出来上がった輪を転がす。 |
上左写真;初献の大豆を頂く。 上右写真;ベットウ(約18Cmの男性器形の木の棒)で、酒で赤土を練った(牛黄の代用)モノを餅に塗っていく。 |
上左右写真;ベットウで最初に法印から頼守が牛玉法印を受け、それから頼守が順番に村人に授けていく。 |
上写真;最後に、餅を引っ張り合いが三度行われる。 |
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Last Updated 2010-01-01