撮影場所&日;滋賀県伊香郡木之本町杉野中村、平成21(2009)年2月7、8日 撮影機材;Nikon D300+VR18−200mm、D80+SIGMA10-20mm、CoolpixL12 伊香郡木之本町杉野は、高時川の上流に位置し、三村に区分される。杉野上村、向村、そして中村である。この三村ではそれぞれオコナイが行われているが、それぞれが微妙に違っている。まづ、各薬師堂を荘厳する花(桜)の形態と、扱いである。そして、社参の道行きでの儀礼である。杉野中村では「神儀合い」という南北両組の出会いがある。そのような形があるのは、杉野でも中村だけである。 杉野中村のオコナイの準備は、本日(ほんび)の前日から行われる。造花作り、餅搗きなどであるが、餅搗きは夕刻から夜にかけてであり、「起し太鼓」が翌朝午前3時半であることを思えば、ほとんど徹夜に近いオコナイとなる。 その「起し太鼓」が集落内を鉦・太鼓・笛で囃しながら、オコナイの本日であることを告げる。 同時進行で頭屋である集会所内では、北組と南組の神事役付が「行水」を行う。行水は背中を塩を付けて水を掛け、清めてもらうのである。 そして午前4時、北組と南組の神事役付が居並び、「使いの儀式」が行なわれる。南北の組が民家を頭屋として行っていた名残の儀式である。 午前5時には、薬師堂へ向けての社参である。高張提灯を先頭に、神儀合・当人・花提灯・花・薬師立餅・八幡立餅・据餅・お囃子の順で、約250m離れた薬師堂へ向かう。薬師堂の下に着くと、南北の組の各役付が順番に向かい合って、「神儀合」の儀式を経て薬師堂へ入り込む。 薬師堂に花と鏡餅をお供えすると、太鼓の二人が堂内に立つ。そしてその周囲を松明を持った諸頭(もろと)が一旦とり囲み立つと、やがて松明を振りながら右へ、はやしたてながら周り始める。その時間は5分ほどだが、堂内は逃げ場の無い煙で充満して、約1m先も見えないほどかすみ、煙と熱気で息苦しくなってくる。太鼓連打は乱声の意味であろうし、松明で燻され悪霊は退散する。その状態は悪霊だけでなく、人も苦しくなってくるが、これは煙と炎による仏教悔過である。堂内の松明は午前6時過ぎに終了すると、それまで女人禁制だった堂内へ集落内女性も参詣に入れるようになる。 仏教的に清められた諸頭は、薬師堂内で午後1時半よりやはり女人禁制で「祝詞(しゅうし)」を行う。この「しゅうし」は部外者は一切立ち入り禁止、撮影禁止のため堂内を伺うことはできなかった。「しゅうし」が午後4時に終わると、堂の扉が開けはなたれ、次年度の当家を決める玉籤が公開下で行われ、本年のオコナイは終了した。玉籤は撮影することできた。 ※杉野中村の皆様にはお世話になり、感謝申し上げます。 |
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■ 餅搗き(前夜) |
杵臼での餅搗きは、やがて「杉野伊勢音頭」を歌いながらの千本搗きとなる。搗いた餅は頭屋内座敷に掲げた平板に擦り付けられる。魔除けの行為の一種であろう。 |
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■ 行水〜社参〜シュウシの玉籤(本日) |
上左写真;南北二組の五人組(組之主)が順に、背中に塩をつけて水を流して清めてもらう。 上右写真;昨年から民家の頭屋ではなく、集会所で南北両組が合同で行っている。が、相互に出立の挨拶をし合う「使い之儀」は残されている。 |
上写真;集会所を午前5時に出発、薬師堂へ向かう。 |
上写真2枚;薬師堂前で南北の組がお互い向かい合って「神儀合い」を行う。持ち物を見せ合い、お互いが自慢、あるいは薬師堂に奉じる前に確認し合うという儀式なのであろう。 |
上写真2枚;薬師堂内で松明踊り。「もろと」達が松明を持って、中央の太鼓二人の周囲を駆けるように右に周る、周る。 |
上写真;薬師堂に荘厳された造花。例えば薬師寺(奈良)の花会式で御本尊を花々で荘厳する儀礼に通じる。 |
上左写真;シュウシが行われている本日午後の薬師堂。扉も閉められ、中を見ることもできない。 上右写真;シュウシが終わると、扉が開けられ、新頭屋を選ぶ玉籤が行われる。 |
上写真;玉籤で選ばれた南北の組の頭屋に、挨拶の礼の儀式が行われている。 |
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Last Updated 2010-01-01