撮影場所&日;滋賀県長浜市木之本町西山、平成23(2011)年2月6日 西山のオコナイのうち、通称「汁オコナイ」と呼ばれる儀礼があり、献饌は 綾之神社へ行われる。 ここのオコナイでは、オコナイの中心的アイテムと目される御餅が無い。汁が調整されて、それが中心的アイテムとなるのだが、その汁が変わっている。里芋の葉から作られるのである。夏、里芋の葉っぱを集めかげ干しする。これを刻んで直径10cmほどの球状にして、熱湯をかけてアク抜きを何度も繰り返す。やがて注連縄の巻かれた釜に入れて、大豆・味噌・調味料を加えて煮込む。それを うち豆汁 と呼 ぶが、味見させていただいたところ、苦いような甘いような複雑な味であった。それとは別に、本年の当屋さんを後搭といい、来年を先搭と呼ぶが、その当屋さん宅での祭典に供する三宝に載せる御神饌にも、他所では見られない食材が乗る。餅米を練り上げてから豆を入れ、三角形にするのである。これは後搭が三角形で、先搭はそうでないから、形状に区別がある。 なお後搭、先搭は、一人前となった男子長男が順番に受けていくことになっている。籤で決まるのではないから、一種の集落内での成人通過儀礼といえるだろう。後搭、先搭は、それぞれ八幡組と清水組とあるが、汁オコナイをされるのは、西山でもこの二組だけである。翌週には、湖北に通例である御餅を中心的アイテムに供する、餅オコナイが集落内において行われる。この餅オコナイでは、一乗寺薬師堂に献鏡されるから、オコナイが仏教悔過をルーツとしているという、その本質を色濃く伝承していることになる。一方、この汁オコナイにおては、汁は八幡様の末社の綾之神社に献じられる。綾之神社は道祖神的な塞ノ神とされているが、古くからこの地の鎮守神様であった可能性があろう。この西山の東には大音という場所があり、そこの伊香具神社には、まるで宮島厳島神社の両部鳥居に似た、伊香式鳥居がある。伝えでは、この伊香鳥居の辺りまで昔は琵琶湖が入り込んでいたという。だからであろうか、この西山の集落は山側に沿うように存在し、その前は湿地であったという。里芋がその湿地で栽培されたことから、里芋を用いたオコナイが伝わっているのであろう。そして里芋は現在でも栽培されている。ただ、里芋の葉を煮込む汁というのは、極めて珍しい。 ※西山の皆様には御世話になりまして、誠にありがとうございました。 |
上左写真;注連縄の巻かれた釜で煮だつ、里芋の葉汁。うち豆汁という。上右写真;とじ豆の入った握り。 |
上左写真;先搭、後搭の御神饌。塔渡しに供せられる。上右写真;汁の献じられる綾之神社。 |
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搭渡しの儀式。組長は返盃を含めて6杯、椀の御神酒を飲み干す。 |
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Last Updated 2011-02-28