滋賀県長浜市木之本町、 平成25(2013)年6月撮影 冬、湖北における オコナイ では、樹枝に御餅を付けた いわゆる 餅花 が奉じられる集落がある。 その餅花を 「まい玉」 あるいは 「マユ玉」 と呼ぶ。 パーセンテージから云うと「まい玉」が多いのだが、戦後オコナイの研究者であられる井上頼寿氏によると、 「まい玉は元は真玉で豊作を意味する雪を現す言葉が 舞玉とか繭玉とか云われるようになり 」 ということらしい。 雪が豊作の象徴とは、まるで新野の雪祭を連想するが、雪=豊作 という民俗的な発想の方程式には興味深い。 それはさておき、「マユ玉」と呼ぶからには、養蚕との関連性があろう。しかしながら現在の湖北で、実際にカイコを飼って マユを作りだしておられる農家は、無い。 現在は、ということであって、かつては桑畑が広がっており 蚕を飼っていた というご老人のお話は聞くことができる。 「マユ玉」というオコナイのアイテムの呼称の源たる実物を、撮影してみたい。 そしてこのほど、長浜市において繭から「糸取り」をされて糸に紡ぎ出す作業を撮影することができた。 作業は朝の8時過ぎから夕刻5時くらいまで、一度に百個ほどの繭を熱湯に入れて 糸繰り(座繰)をして糸車に巻き付けて行く。これを一日に何十回と行う。 目の前で無数の繭から糸が作られていく光景を見て、江戸時代から行われており特に明治に入ってから養蚕や生糸の 繊維産業が興隆した地場産業の発展をオコナイの中でも念じ、餅花の呼称にまで影響を与えた様子を想像することができた。 この工房で作られた生糸は、主に三味線の弦などに用いられる。 (事前に見学許可済 : 工房の皆様にお世話になり、感謝申し上げます) |
上写真;集落のメインストリート。坂の下に生糸工房がある。 |
上写真;現在、生繭は岐阜県の美濃太田から仕入れる。運ばれてきた繭は、火を入れた熱風によって中の蛹を半場殺す「殺蛹(さつよう)」が行われる。 |
上写真5枚;繭は80℃ほどの熱湯に入れてから藁箒で撫でて糸口を探す。20本くらいをまとめて「ふしとり器」を通して一本にして小枠に巻き取っていく。これを「座繰り」と呼ぶ。 |
上;小枠に巻き取られる生糸と、並ぶ小枠。 |
上左右;小枠から大枠に改めて巻き取り替える。揚げ返しという。 |
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Last Updated 2013-11-18