日本!(近江の祭・火祭)
No.35 多羅尾のハナトリ
撮影場所&日;滋賀県甲賀市信楽町多羅尾 里宮神社、平成23(2011)年7月17日

この年、例年より2週間は早く梅雨が明けた。焼きつけるような夏の日差しの午後、里宮神社に着くと、集落の人々がハナガサの準備の最中であった。社殿の日陰に避難すると、微風ながら爽やかな風が心地よい。ここのハガサは高さが5mはあり、花の種類は牡丹と枝垂れ桜で、造花は集落の人々が作製される。6本のハナガサは、多羅尾の1〜6の組がそれぞれ一本づつお供えされる。今では1〜6組と呼んでいるが、これは戦後まもなくに改称されたもので、かつては上出組・浦出組・中之原組・下出組・茶屋出組・新田(しんで)組と称しており、現在は各組が20〜30軒で構成されている。
やがてハナガサが完成すると、まず祭典が執り行われる。祭典後に、宮守さんの太鼓の合図でハナトリが始まる。その後には餅撒きでおひらきとなる。
このハナトリの行事は、夏の暑い盛りに疫病が流行るため、その疫病をハナに憑かせて集落外に遷却して集落内を浄化する目的であり、牛頭天王系の牛頭天王社(八坂神社)、津島神社なのど疫病・魔障祓いが根本にある。疫神を憑かせた花は、本来は集落外に流すか打ち捨てるのが本来であったが、それが時代と共に転化して御守りとなっている。花は神棚や仏壇にお供えすると無病息災だということで、なんとしても花を奪って帰らねば、というご婦人もいらっしゃった。現在、花には金封も付いており、花の最先端には5,000〜10,000円も入っているという。太鼓と同時に、壮絶な奪い合いが起こったのは云うまでもない。。。
多羅尾のハナトリの大きな花傘、、、日野町の春に行われるホイノボリや、祭りに出る風流傘と共通性を感じる行事であった。
多羅尾の皆様には御世話になりまして、ありがとうございました。

上写真; 牡丹や枝垂れ桜の造花を差して、ハナガサの準備をする。

上写真; 仕上がった美しいハナガサ。この僅か数十分後には花取りで、ボロボロになってしまう。

上写真; 祭典の 「鈴の舞」。 巫女さんを、ハナガサが見守る。

上写真; 祭典の玉串奉奠。お供えにも花が供せられる。

上写真; ハナトリ。 5mもある花傘を倒す。花傘の下敷きになる者、その上に乗っかる者。激しい奪い合い。

上写真; 美しい花がGetでき、満面の笑み。ご多幸を!

上写真; 花を奪い合った後は、さらに餅撒きに興奮する。


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Last Updated  2011-12-08