■滋賀県栗東市中沢、 平成24(2012)年5月 撮影 |
菌神社という珍しい名前の神社がある。菌(きん)と書いて、くさびら と読む。かつては口狭比良大明神、そして室町時代には草平大明神と云われていて、現在の漢字になったのは明治に入ってからである。菌と書いてクサビラとも読むが、キノコ一般を意味している。主祭神は大斗能地神と大斗乃弁神という男女の神様である。欽明天皇の御世(630年ころ)、近江地方が大飢饉に襲われたとき、神社周辺には今まで見たことの無いようなキノコが大量に発生しており、人々はそのキノコを食べることで飢えをしのぐことができた。それ以来、この神社は菌(きのこ)の神社となったのだという。キノコにも柄の無い茸や柄の有る菌とあるが、住人を救ったのはヒラタケだという説も聞く。この神社境内を探訪すると、雑木に緋色茸(添付写真)など豊富に生えており、たしかに菌が生えやすい環境が残っているようだ。 近江には、乳酸菌醗酵させて熟成させた“熟れ寿司”が存在する。 菌を祀る菌神社において、菌を用いた御神饌が有るのも偶然ではないだろう。 菌神社において、珍しい“雑魚(ざこ)”の馴れ寿司が御神饌として調製される。琵琶湖周辺は馴れ寿司の宝庫で、御神饌として ふなずし を供する祭典もある。ふな寿司は熟成期間が半年に及ぶ、本馴れ寿司である。一方、今回の御神饌は馴れ寿司であるが、醗酵熟成期間が10日間という超早熟れ寿司(生なれずし)である。雑魚というのは、漬ける魚を決定していないからかもしれない。ヒワラ、ハス、小鮎なども用いられたそうだが、私が参拝させていただいた平成24年度は、余呉湖で2月13日に獲れたワカサギであった。2〜4月に塩漬けし4月に10日間、御飯と一緒に漬ける。150尾も漬けるのである。桶に入った雑魚寿司は乳酸菌醗酵をする。桶の蓋は、祭典後の直会で開かれて氏子や参拝者にもふるまわれた。熟成期間が短いから、魚は原型を留めたままだが、御飯は若干の醗酵が起こっていた。戴いたが、まだ小骨まで完全に柔らかくはなっておらず、若干の歯応えを感じつつ美味しく戴いた。 中沢の皆様にはお世話になり、どうもありがとうございました。 |
上写真;祭典における湯立神楽。その周囲で、御神輿を担ぐ子供達が湯を浴びながら歓声をあげていた。 |
上写真;お供えされた雑魚寿司。右側の桶である。 |
上写真4枚;撤下後の御神饌を直会でいただく。押し寿司のサバ寿司、巻き寿司も出て、寿司のワンダーランド状態だ。 |
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Last Updated 2012-07-12